感想

映画『CUTIE HONEY -TEARS-』感想

そんな「キューティーハニー」が平成28年に再度実写化されることに。

タイトルは「CUTIE HONEY TEARS」。

恐れ知らずの監督の名は「ヒグチリョウ」と「A.TAsai Takeshi)」。

オフィシャルサイトにすら情報は皆無。……無名?

ただ、リサーチしてみるとミュージックビデオ(MV)業界で活動しているということが分かりました。

また、A.Tは次の自主制作短編動画を手掛けていますし「攻殻機動隊SAC」「攻殻機動隊SAC.nd GIG」のOPムービーの演出を担当したということも判明。

どうやら、CGSFチックな世界観を生み出すのがお上手なようです。

現に「CUTIE HONEY TEARS」もそういった仕上がりになっていますね。

笑わせるつもりのない終始真剣なムードの映画となっています。

さて、先ほどの庵野氏は平成28年に「シンゴジラ」を手掛けて大成功しましたね。

そして、同じ平成28年に「CUTIE HONEY TEARS」が上手くいけば、色々な意味でのリベンジが果たされることなったはず……

ですが……。そうはいかなかったみたいですね。

ただ、まあ「怖い物見たさ」で視聴してみるのも一興です。

 

 

映画は完全なものであるべき

「ハリウッド映画を連想させる」「最新の映像表現が盛り込まれている」と、凄まじい宣伝文句が使われていた「CUTIE HONEY TEARS」。

実際、一見「すごい!」と思わせるだけのインパクトはありました。

ただ、あくまで「インパクト」だけ。

しかも「売り」だったCGが積極的に取り入れられていた部分と言えば、小道具や背景くらい。

短編動画であればそれでもごまかせるのかもしれませんが、これは映画です。

演出、登場人物、ドラマ、ストーリーなど、その全てが調和してこそ「名作」と呼ばれる映画になるわけです。ですから、映像がどれほどハイクオリティであってもそれだけではどうにもなりません。

「褒められるのはCGだけ」と言ったところ。

別に厳しい評価でもないと思います。

まず、ドラマ。どこかで聞いたことのあるような台詞しかなくて、なんの面白みもない。

アクション要素でカバーできる部分もあったでしょうに、それもとにかくショボい。なぜ、そこにCGを盛り込まないのか。

そして、世界観。「驚異のウイルスや異常気象の影響で、人口が縮小の一途をたどっているそう遠くない未来」という設定なのですが、そんな雰囲気はほぼありません。

と言いますか、監督が昔作った短編動画の世界観を使い回してるだけな気がします。

だって、デザイン(ドローンとか)の差が分からないくらいですし。

ストーリーもグダグダだと思います。まず「有害物質が発生している理由」が全然明かされていないので没入できない。

そして「有害物質の元凶」をどうにかするのではなく「今ある有害物質を除去」して終わり。これ、オチですからね? 意味が分からない。

発展しすぎた技術の暴走のせいで危機が迫っている……的な話だとは思うのですが、その解決方法が「空中元素固定装置」という、都合の良いテクノロジー。

「暴走したテクノロジー」を「今後暴走しそうなテクノロジー」で封じ込めるだけ……。え、映画としてソレでいいの?

登場人物もダメダメでしたね。言ってみれば「西内まりやファンだけ見てね~」という感じ。後半は特にそうでした。

とある場面で瞳が涙を流すんですが、「AIだし感情は欠損しているはず」と見せておいて「本当は感情がある!」と観ている人をビックリさせるのが、目的だったのだと思います。

ですが、彼女の演技力が低すぎてなんだか良く分からないシーンになっているというのが正直なところです。泣き真似なのかな?と最初は感じたくらいです。

脚本を工夫して「何らかの理由があって、感情があるフリをしているAI」みたいな設定にしておけば、むしろ彼女の演技はピッタリはまったと思うんですが。

「エクス・マキナ」などでもそうですが、やっぱりアンドロイド役って相当困難なんでしょうね。石田ニコルさん(ジル役)って実はすごかったのかもしれません。

今回のキューティーハニーも「見た目」よりも「演技力」で女優を選ぶべきだったと思います。

作中に「不完全だから勝てるのよ!」というセリフがあるのですが、映画そのものには通用しない言葉ですね。

さて、とりあえず「これも一応キューティーハニーではあった」という前提で話しますね……

ただ、とにかくCGだけで映画として成り立つはずがなかったんですよ。

ちなみにハリウッド映画でも、例えば「バッドマンVSスーパーマン」とか「インデペンデンス・デイ リサージェンス」のような「映像だけ」の作品は酷評されています。

ですから「ハリウッド映画に勝ちたいなら、映像を頑張らないと!」なんて、あまり思わない方が良いと思います。

実際、ハリウッド業界においても「ムーンライト」のような物語性を重視した映画の方が評判が良いですしね。

ですので「ハリウッドと言えばCG!」なんて考え方をした映画監督がいたとしたら、その人はもう絶滅危惧種ですね。

そういう観点で見れば「CUTIE HONEY TEARS」はむしろ古くさい映画だったのかもしれません。

結局「キューティーハニーの実写化はダメ」という印象を強くしてしまっただけだなあ……